十三年と一棟
2010年に藤森建築の茶室制作に関わったことをきっかけに宿泊施設の設計を依頼し、企画13年目に着工した。2023年に開業した。一棟貸しである。敷地面積は4000平米、客室面積は63平米である。屋根には富士桜が植えられ、屋根全体には手曲げの銅版が使用されている。外壁には焼杉、室内の壁は漆喰、室内の床や家具などはクリ材で仕上げられている。
設計を依頼する前に、依頼する側が作り手の現場に入っている。そこから着工まで13年という時間がかかっているため、この建物は短期で再現できる種類のものではない。敷地4000平米に対して客室は63平米の一棟のみで、残りはすべて建物の外側として残されている。屋根に木を植え、銅版を手で曲げ、焼杉・漆喰・クリ材で仕上げるという工法も、量産の前提に立っていない。
AKUMATOは流行ではなく積み重ねを見る。ここで積み重なっているのは建物の古さではなく、発注から完成までの13年という時間と、その起点に施主自身の手作業があったという事実である。設計を外注して複数棟を建てた宿では、この経緯も敷地と客室の比率も成立しない。
こんな旅に:建物そのものに泊まりに行く方、1棟を貸し切って他の客と会わずに過ごしたい少人数の旅に薦める。温泉や館内施設の充実を求める旅には向かない。
出典を確認する →